教員免許の種類と区分

はじめに

学校の先生になるには「教員免許(教員免許状)」が必要です。ここでは、教員免許の種類などについて説明します。

学校の種類と教員免許

教員免許が必要なのは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教員になる場合です。「小学校教諭免許状」「中学校教諭免許状」など、学校の種類ごとに分かれています。小学校教諭免許状しか持たない場合、小学校の教員にはなれますが、中学校や高校の教員になることはできません。

幼稚園と小学校、小学校と中学校というように複数の教員免許を取ろうとすれば、大学などで履修しなければならない科目数も大幅に増えます。ただし、中学校と高等学校の組み合わせでは、中学校のみ、あるいは高等学校のみ免許を取る場合と比べても数科目程度の増加で済みます。したがって、中学校と高等学校の免許は両方同時に取得するのが一般的です。

特別支援学校の教員になるには、原則として「特別支援学校教諭免許状(以下「特支免許」と記す)」が必要です。特支免許を取るには、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のいずれかの普通免許状([教員免許の「区分」と「種類」]の項で解説)を持っている必要があります。ただし、当面の間は特支免許がなくても、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のいずれかの普通免許状のみで特別支援学校に勤務することができるとされています。また、特支免許がなくても特別支援学校教諭の採用試験を受けることができる自治体も多くあります。特支免許は幼・小・中・高の校種区分がない代わりに、5つの特別支援教育領域(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱)が定められています。

その他に養護教諭(いわゆる「保健室の先生」)になるための養護教諭免許状や、平成17年度から新設された栄養教諭免許状があります。これらの免許も幼・小・中・高の校種区分はありません。なお、知的障害特別支援学校が以前「養護学校」という名称であった関係で、「養護学校の先生になるには養護教諭免許状が必要」との誤解があるようですが、正しくは前述の通りです。

 

ポイント

  • 働きたい学校の種類に合わせた教員免許を取る必要があります。ただし中学校や高等学校の教員を希望する場合、中学校と高等学校の両方免許を取るのが一般的です。

 

ポイント

  • 特別支援学校の教員になりたい場合、自治体によっては特別支援学校教諭免許状が必ずしも必要でない場合があります。受験予定の自治体の募集要項を調べてみましょう。

注意

  • 東京都の公立中学校や都立高校の教員をめざす場合は、必ず中学校と高等学校両方の免許が必要です。横浜市、川崎市の市立高校教員を目指す場合は、中学校教員免許も持っていることが望ましいです。

 

 教科と教員免許

中学校と高等学校の教員免許は教科ごとに分かれており、免許を持っている教科についてのみ授業を行うことができます。

(例)
中学校教諭免許状(国語)
高等学校教諭免許状(数学)

中学校と高校で名前や内容の異なる教科

  • 中学校には社会科がありますが、高校にはありません。かつては高校にも社会科があったのですが、平成元年の学習指導要領改訂で地理歴史科公民科の2教科に分割されました。こうした経緯から、高校地歴科や公民科の教員を目指すには、両方の教員免許がないと不利だという声もあります(真偽の程は分かりませんが)。地理歴史科と公民科の2つの教員免許を取ろうとすると、1教科の場合の1.5倍程度の単位数が必要になるので大変です。
  • 中学校では国語の授業で書道も教えますが、高校では書道は教科「芸術」の1科目に位置付けられています。教員免許も同様で、高校では美術や音楽と並んで書道の免許もあります。免許取得の際、中学国語課程では書道についても学びますが、高校国語課程では書道は不要です。

  

教員免許の「区分」と「種類」

教員免許には「専修免許状」「一種免許状」「二種免許状」の3つの区分があります(ただし高等学校教員免許は専修免許状と一種免許状だけで、二種免許状はありません)。それぞれの免許を取るのに必要な条件などは次の通りです。

【二種免許状】
・ 短期大学卒業以上
・ 短期大学または四年制大学で定められた科目の単位を修得
・ 一種免許状に上進する努力義務がある

【一種免許状】
・ 四年制大学卒業以上
・ 四年制大学で定められた科目の単位を修得

【専修免許状】
・ 大学院修士課程(博士前期課程)修了以上
・ 一種免許状所持、または一種免許状取得に必要な単位を修得済であること
・ 大学院で定められた科目を24単位以上修得

なお、教員としての実務経験があれば、上記とは異なる条件で教員免許を取得することも可能です。

ときどき「専修免許状があると教員採用試験で有利」「二種免許では合格できない」などの噂を耳にします。選考基準は公表されていないので断言はできませんが、個人的には公立学校の教員採用試験では免許状の区分による有利不利はないと考えます。ただし、大学院で学んだ成果などを面接で上手くアピールできれば良い評価が得られるでしょうし、短期大学出身者は、四年制大学出身者に比べて就学期間が2年間短いのですから、その分を努力でカバーしないと互角の勝負にならないという面はあるでしょう。

上記の「専修」「一種」「二種」の教員免許をあわせて普通免許状といいます。普通免許状は、何処の都道府県教育委員会が発行したものであっても全国で有効です。以前は普通免許状は生涯有効だったのですが、教員免許更新制度の導入により、現職教員は10年に1度、更新講習を受講しないと免許が失効する(=使えなくなる)ことになりました。教員免許状には、この普通免許状のほかに、特別免許状と臨時免許状があります。
 
特別免許状
は、特に優れた学識や経験、技能を持つ人に与えられるもので、授与件数は年に数十件程度とごくわずかです。授与された都道府県内においてのみ使用可能で、授与された日の10年後の年度末まで有効です。
 
臨時免許状は、普通免許状を持った人を採用できない場合に授与されるもので、多くの場合、何らかの教員免許を持っている人に授与されます。臨時免許状も授与された都道府県内においてのみ使用可能で、有効期間は授与された日から3年間です。

特別免許状や臨時免許状は、いずれも学校側の要請で授与されるもので、大学で教員免許を取り損ねた人が個人で申請して授与されるような代物ではありません。
 

教員免許の正式名称

  • 私自身の回答でもよく「小学校免許」「中学理科免許」などと書いていますが、教員免許状に記載される正式な名称は「(校種)教諭(区分・種類)免許状(教科・中高のみ)」となります。例えば
  • 小学校教諭一種免許状
  • 高等学校教諭専修免許状(地理歴史)

    のようになります。 

 

教員免許状ってどんなもの?

  • 教員免許状は都道府県教育委員会によって授与されますが、運転免許証などと異なり、書式は都道府県によってまちまちです。縦書きのところもあれば横書きのところもあり、両面あり、片面あり、明朝体もあれば楷書体もあるといった具合です。ただし、普通免許状は書式が違っても全国で有効です。運転免許証のように常時携行する必要はありませんが、講師や教諭として採用されたときや、教員免許状更新のときには提出が必要になります。万一紛失すると、再発行には手数料が必要なので、大切に保管しましょう。
  •  教員免許状の例(1)
  • 教員免許状の例(1)

     教員免許状の例(2)教員免許状の例(3)